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2011年10月23日

犬と暮らすこと

犬はペットでなく家族だと思っている方のほうが多いことでしょう。
家族だから厄介なこともありますし、面倒なこともあります。
けれども、家族だからこそかけがいのない関係があり、何よりも大切な絆が生まれます。

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我が家でも数年前まで、マルチーズを飼っていました。
譲り受けたこのマルチーズが曲者で、たまたま引き取り手を探していた方のお宅伺うと、かわいらしくひょこひょこと私の後にだけについてくるのです。縁があったのでしょう。
すっかり騙された私はその子犬を家に連れ帰りました。ところが、その後が大変でした。
幼い頃からネグレクトにあい人を信じられなくなったマルチーズは、もちろん躾はされていないし、吠え癖、噛み癖があり、なかなかなつきませんでした。
家族の皆がキズだらけになり途方にくれ、飼うことをあきらめかけもしましたが、憎めないダメ犬にも私たちの想いが伝わったのでしょう。しばらくすると、離れられない家族の一員となっていました。
長い月日が流れ、13歳を過ぎた頃から体が小さくなり、そしてその時は訪れました。
家族に看取られ、綿の抜けた小さなぬいぐるみのように眠っていきました。
いなくなった今でも、時折見せたあどけない瞳でひょっこり現れるような気がします。

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犬とともに暮らすことは、共に歳を重ねるということです。
私も犬と暮らす家の設計をすることがあります。
はしゃいで走り回る子犬から、家の中で静かに横になっている老犬まで、設計には犬が安全で健康に暮らすことができる配慮が求められます。
何故ならば、飼い主は幸せに暮らす犬たちがいる家に住みたいのですから。

あるお宅には、シベリアンハスキーの老犬がいました。もう足腰が立たず、家ではずっと寝ているだけです。
それでも犬用の車輪をつけ散歩をしているとのことで、飼い主の愛情の深さを感じました。リビングに隣接したサンルームを設け、彼が一番落ち着いて家族を見守れる場所を作りました。
また、あるお宅では、シーズを自分の娘のように大切に育てており、人も犬も動きやすいプランをご希望でした。
人の生活空間をコンパクトにまとめ、彼女が自由に回遊できる動線を作りました。
床は滑りにくくキズつかない床材としてコルクやタイルなどを検討しましたが、人にとっても犬にとっても肌触りがよく耐朽性の高い無垢のアッシュ材(植物性オイル仕上げ)を使いました。
壁はどちらのお宅も、臭いや調湿効果を考えて珪藻土仕上げとしています。

実は人間の住まいの寸法は犬にとって適切なものではないということをご存知でしょうか。
それを知っておくと、犬のための空間を考えやすくなるでしょう。特に気をつけてほしいのは階段です。上下移動は犬にとって危険をはらんでいるということです。
日本の敷地条件では住宅の多くが2階建てや3階建てとなっています。そうなると階段が犬にとって非常な負担となってきます。
人のためには、手摺を取り付けたり、滑りにくい床材などで踏板を作りますが、犬にとっては階段の蹴上寸法は大き過ぎて、連続してジャンプしながら昇っていくのですから、犬の脚には相当の負担がかかり、股関節を傷める原因となったりします。
また、一度階段から滑り落ちた記憶のある犬は階段を怖がり昇らなくなってしまいます。
室内の家具は配置によっては犬たちにとって大きな障害物になっているかもしれませんし、室内の段差も人が感じている以上に大きく感じているかもしれません。

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犬と共に上手に暮らしていく家を作るためには、犬と家族が一緒にいられる空間、犬がリラックスできて快適にいられる専用スペースを、犬が高齢になったときの対策など、設計段階から家族と話し合うことが大切です。
ホルムアルデヒドは論外、犬の負担を抑える床材(テラコッタやコルク)、犬くぐり(犬専用のドア)、臭いを抑える壁(珪藻土など)、抜け毛対策としてのビルトイン収納(キッチンなど)、夏の暑さをしのぐ風通し、トイレやシャワーの配慮などなど。
大きな犬がいる場合には、パティオを作ったり、土間を作ったり、犬小屋ならぬ犬部屋を作ってあげる方もいるようです。
今では住宅のバリアフリーは当たり前のように考えられていますが、人と犬が一緒に暮らすのならば、そこには犬目線のバリアフリーがあっても良いと思います。
犬との共生環境をきちんと考えるということは、実は人の暮らしを考えることにつながっているのだと思います。

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一級建築士 吉岡令子

プロフィール
大手住設メーカー、設計事務所勤務を経て、独立。個人住宅の設計をメインとしながら、インテリアスクールでの講師や行政のまちづくり委員を務めるなど幅広い領域で活躍中。ビーンズデザインと共同して建築デザインユニットを運営中。

  • CRESCASA「クレスカーサ」
  • おひさまハイムFAN
  • セキスイハイムの平屋 楽の家